医療用ウィッグ価格の決まり方
医療用ウィッグの種類も価格も千差万別で、選ぶことが大変だという話をよくお聞きします。
自分に合う医療ウィッグを失敗しないで手に入れるよう、ここで医療用ウィッグの生産過程からはじめ、価格・値段の違いがどこで出るのかを解説します。
ベースキャップの縫製の違いについて
ウィッグのフィット感や付け心地はここで決まります
キャップの素材や構造、縫製の仕方により価格は多少異なります。
伸縮性にすぐれて、ソフトな高級素材で色落ちのない素材ほど値段が高めです。
縫製の丁寧さ、工程の複雑なものは手間と時間がかかる分コストもあがりますが、この段階で決定的な価格差が出ることは殆どありません。
2、毛髪素材(人毛、人工毛)
人毛について
人毛は産地や長さによって価格が違います。
日本人に一番近い髪質はまっすぐで太くて張りのある中国人毛です。
50cmの長さを超えるとなかなか手に入れにくいですが、1kgあたり8万円から20万円します。
その次がインド毛と言われています。
インド毛や東南アジアから出る人毛は細くて、ウェーブがあるのでヨロッパ人に向いてます。
同じく長さにより価格が違ってきますが、1kgあたり5万円から15万円します。
質のよくない人毛で安いのもありますが、切れ髪になり易かったり、パサパサになりやすいので人毛だからと言って良いとは限らないです。
人工毛について
近年には光沢を抑える加工工程を投入し、耐熱性のウィッグ専用の人工毛が良く使われてますが、スタイルの形状記憶をするので、好まれる傾向になりつつあります。
価格も長さに関係なく、人毛よりはるかに安いのです。
大量に購入すると、日本製で1kgあたり2000円から1万円で入手できます。
人毛と人工毛ミックス 人毛と人工毛をうまく混ぜると、コストをかなり下がることができて、人毛と人工毛の良いところを取り、自然でスタイリングし易いウィッグに仕上がりますので、部分ウィッグや医療用ウィッグで多く取り入れられています。
3、植毛(手植え製、機械製)
ここでも価格の違いが多く出ます。
準備したベースキャップに毛髪を植える作業を行いますが、総手植え、機械植え、半手植えなど3つの方法があります。
ハンドメイドで髪を1本から2〜3本取り、植毛用針でベースネットの網目に結び付ける作業を総手植えといいますが、視力がよいことと、細かい作業をスピーティに仕上げる集中力のいる作業なので、若い女性限定の仕事になります。
ベースネットの素材や工程により植毛作業の難度も異なりますが、網目が細かくなるほど難度がアップします。
また、人工皮膚部分の二層ネットや三層ネット構造の引き抜き植毛工程などは熟練技術の必要とされる高難度作業になるので、手間がかかる分コストも上がります。
一つのウィッグに植毛するのに最短で10日はかかり、コストも地域により違いますが、2万円から4万5千円すると言われています。
安いコストを求めて世界の工場は発展途上国へと移動へ移動を重ねている状況です。
機械植え(ミシン植え)作業
機械植え作業は3つの工程になっています。
1、ヘアスタイルに従い、諸セクションごとに髪の長さ、カール、ボリュームなどを決めて、仕込み作業を行います。
2、デザインされた髪を横にならべ、ミシンでミノゲをつくります。
3、ミノゲを設計図とおりにベースキャップに縫い合わせます。
4、コーティングなど後処理を経てスタイリングします。
工程の精密度や難度によりコストの差はありますが、2500円〜3000円ぐらいかかります。
半手植え仕様
手植え部分と機械植え部分を組み合わせた植毛方法です。
人の目線が行きやすいつむじ部分や分け目を手植え仕様にし、他の部分は機械植え仕様にしますが、うまく配合すると、自然さ、通気性などよい効果をえられ、価格的にも安くなります。
9000円から1.5万円ぐらいかかります。
4、後処理工程、出荷
植毛が終わったら、洗浄、トリートメント、スタイリングなどの工程をへて、きれいに包装され、出荷準備をします。
ウィッグは航空便で輸送されるのが一般的ですが、国際便ですので、送料は高めですが、WTO貿易法に定めた特恵国からの輸入ですと、関税はフリーになります。
消費税は適応しますので、輸入の際に税関に支払う形になります。
5、ヘアスタイル加工
海外から輸入したウィッグをウィッグ専門美容師がひとつひとつカット加工をします。
ウィッグのカット技術は人体ヘアーカットと異なる特殊技術ですので、美容室のベテラン美容師でも、一から習得しないといけないので、なれるまで1年間は必要になります。
必要に応じてウィッグの植毛方向、ボリュームなどをサイズにあわせて微調整しながら、細かくカットし、ヘアースタイルに仕上げますので、ウィッグを1台カット仕上げに最低でも、1時間半から2時間はかかります。
5000円から8000円のカットコストが必要になります。
6、販売ルート
大手メーカーの場合
広告費を使い大々的に宣伝し、店舗を大量に構えて販売いたします。
絶大な安心感もありますが、商品代金の中には広告費や管理費なども含まれてしまい、値段が高くなってしまいます。
デパート等百貨店で販売している場合
広告費はさほど使っておりませんが、百貨店は家賃が高いので、その分が商品に反映されてしまい、少し金額が高くなってしまいます。
中小企業の場合
主に少店舗での販売、インターネットのみの販売となり、「品質はどうなんだろう」と不安感があります。
また、店舗が限られているので、アフターサービス等の不安もありますが、大手メーカーや百貨店と比べると5〜7割ほど安く同等品が手に入ります。